【要約と感想】『性別違和・性別不合へ 性同一性障害から何が変わったのか』針間克己著

LGBTQの本・論文

性別違和・性別不合へ 性同一性障害から何が変わったのか』
針間克己著  2019年9月15日発行

性同一性障害をめぐる様々な問題に精神科医として20年以上携わっている著者ならではの経験に基づいた視点と最新の知見・動向から書かれた一冊。 DSM、ICDの歴史や時代背景に触れながら、性同一性障害から性別違和・性別不合への流れを読み解く。

目次(Contents)
1.DSMとは?DSM-5の「性別違和」とは?
2.ICDとは?ICD-11の「性別不合」とは?
3.病理化と脱病理化とはなんだろう?
4.保険適用、特例法の名称はどうなるのか?

1.DSMとは? DSM-5の「性別違和」とは?

【DSMの概略】
DSMとは日本語では「精神疾患の診断・統計マニュアル」と訳される。
DSMは米国精神医学会というアメリカの精神科医の大きな学会(民間団体)が発行している。 ポイントは、「アメリカの」「民間団体による」「精神疾患」のマニュアルだということ。 1952年に第Ⅰ版が発行され、以降、だいたい10年おきに改訂されている。現在、第5版が発行されている。

【DSM-5における「性別違和(Gender Dysphoria)」】
①疾患リストに残った :精神疾患のままになった
②疾患名の変更:「障害」から「性別の違和感」という症状を表す言葉になった。
③Sex(性)という言葉がassigned gender(指定されたジェンダー)に置き換えられた
④experienced/expressed gender(体験し、または表出されたジェンダー)という言葉が使用された
⑤男性か女性かという二分法ではない
⑥身体的性別への違和感がなくても診断基準を満たす
⑦性分化疾患が除外疾患ではなくなった
⑧性的指向に関する下位分類が削除されている

【DSM-5における「性別違和(Gender Dysphoria)」の診断基準】
A.その人が体験し、または表出するジェンダーと指定されたジェンダーとの間の不一致が6ヶ月以上あること
B.その状態は、著しい苦痛、または社会や職業生活などでの機能の障害と関連していること。

2.ICDとは? ICD-11の「性別不合」とは?

【ICDの概略】
ICDとは簡単にInternational Classification of Diseaseの頭文字をとって「ICD」という。日本語では正式には「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」と呼ぶが長いため「国際疾病分類」と呼んでいる。 ICDはWHO(世界保健機関)が世界保健機関憲章に基づき作成している。 ポイントは、「公的機関であるWHOが作成する」「国際的な」「精神疾患の」分類であること。

【ICD-11における「性別不合(仮訳)gender incongruence】
ICD-11は2018年に発表され、2019年に正式に承認され、2022年1月に使われ始める予定となっている。 「障害」から「状態」へと変更したものの、ICDには分類されている。

【「状態」に残っていることの意味】
「障害」から外されたことで、「精神疾患」ではなくなった。 しかし、ICDに分類されている。このことにより、ホルモン治療や性別適合手術などの医療を受けることの必要性が示されている。

3.保険適用、特例法の名称はどうなるのか?

【保険適用】
日本ではICD-11に准じているいるため、厚労省は現在の保険適用はそのまま継続するとしている。

【特例法】
現在の特例法では、戸籍の性別変更に関しては性別適合手術を受けることが条件となっている。 しかし、国際標準では生殖不能要件は人権侵害だとして、排除する動きとなっている。

4.感想・まとめ

性同一性障害から「性別違和」「性別不合」の流れを知るためにわかりやすい良書。 著者は精神科医で性同一性障害者・トランスジェンダーに20年以上関わっており、机上の空論でなく経験に基づいて書いてある。 勢いがあり一気に書いている感じがするが、当事者に対して思いやりがある書き方。 当事者でなく精神科医がどう考えていて、どう捉えているのかわかるには良書だと感じました。