【要約と感想】日本と世界のLGBTの現状と課題―SOGIと人権を考える―

LGBTQの本・論文

理学療法士でトランスジェンダーのJUNです。

今回は、『日本と世界のLGBTの現状と課題―SOGIと人権を考える―』を要約します。

この本は、LGBT法連合会が主催した、2018年4月30日に開催されたシンポジウム「SOGIは今?―歴史と国際から見る今後」をもとにLGBT法連合会が編集したものです。

世界と日本のLGBTのおかれている現状を人権と法律という視点からわかりやすく比較した、画期的な本です。

世界との比較を知りたい人には一番に薦めたい本です。

構成は以下のようになっています。

第1部:世界のSOGI 
第2部:日本のSOGI
第3部:提言(このブログでは割愛)

第1部:世界のSOGI

ここでは、国際人権、国際社会が日本をどう見ているのか、LGBTに対する国際判例について主に述べられている。

国際人権

先ずは国際人権について。国際人権とは、国際的に認められてきた人権の最低水準のこと。

国際人権でLGBTとSOGIを考えるために、先ずはLGBTとSOGIという言葉の違いについて理解する必要がある。LGBTとは「誰」の問題か、ということ。SOGIは属性や特徴、何が問題になっているのかを示すために使われる概念である。SOGIはすべての人に当てはまるからこそ、LGBTの人々が経験している困難を通して、すべての人がSOGIによって分けられていると考えることで、差別意識を減らせると考えている。

国際社会は日本をどう見ているか

現在日本では、SOGI差別に関連する法整備がなされていない。そのため、国連機関の自由権規約委員会から、早急な対応を取るように求められている。また、国連人権理事会の普遍的定期審査では2006年から2017年の間に合計19件、改善勧告が出されている。内容は、SOGI差別を禁止する法律を制定すること、性同一性障害者特例法の改正、DV防止法の拡大などとなっている。

LGBTに対する国際判例

いくつかの国際判例を基に、私生活、家族生活、婚姻、差別の禁止などの権利について人権について述べているが、ここでは2例だけ挙げる。

私生活に関しては、「私生活の尊重を受ける権利」というものがある。これは、「自己決定権」「幸福追求権」とも言われている。日本にとって一番重要なのは、「ソドミー法」だ。ただ、日本にはソドミー法は存在していないため、「性別の変更に関連する国際判例」が該当する。性別の変更のために生殖腺の摘出手術を課すことは人権侵害である。また、性別適合手術を受けることが違法とならないような指針を国が作らないことは人権侵害である。わかりやすく言うと、手術を保険適用とし手術を受けやすくすることが大切であり、していないのは人権侵害である、ということである。

差別の禁止に関しては、2000年の「ダ・シウヴァ対ポルトガル事件」がある。ヨーロッパ人権裁判所にて、異性カップルに保障されているような権利が同性カップルに保障されていないことは、性的指向にもとづく差別だとしている。

日本は国際社会の一員として、国際人権法を守っていく必要がある。LGBTやSOGIに関する国際判例は数多くある。日本はLGBTやSOGIに対する意識がまだまだ低いため、人権保障を実現していくことが望まれている。

このほか、具体的にブラジル、オランダ、ニュージーランド、フランスの在日大使がLGBTに対する各国の現状と施策などを述べている。アメリカについては、現在のトランプ大統領の行っているLGBTに対する法律とアメリカ市民の動きが述べられている。詳しくは、本を読んでください。

第2部:日本のSOGI

第2部では、現在のLGBTを取り巻く日本の現状、裁判の判例、各大学での取り組みが述べられている。

現在のLGBTを取り巻く現状

電話で24時間365日相談を受け付けている「よりそいホットライン」の「セクマイ回線」に寄せられる相談を分析し、困難の特徴、SOGI関連課題の特徴などから見える今後の課題やLGBT支援のNG例・好事例を紹介している。

困難の特徴は、伝えにくい、言いにくいというカミングアウトに関する問題が一番大きい。特に、医療機関や公的機関に対するカミングアウトの困難さが特徴である。セクシャルマイノリティの悩みの8割が人間関係の悩みであり、性的指向や性別違和感の悩みなど性別のみの悩みに留まることはない。性別の悩みから発している仕事の悩み、恋愛、友情、周囲の偏見・無理解などが多い。そのため、SOGIを尊重したインクルージョン型の一般相談を受け、その悩みを支援していくことが大切である。支援では、前提としてSOGIは全ての人に該当する事だと理解していることが重要である。行政主体で行う時は、LGBTの民間団体に任せるのではなく、自治体が課題を解決していくために自分の事として学んでいく必要がある。

日本での判例

日本では、性的指向や性自認に関する裁判例で実際の判決が出ているのは少ない。ここでは、永野靖氏が弁護士を勤めている係争中を含めた判例を紹介している。

事件は「府中青年の家事件」「S社性同一性障害者解雇事件」「経産省職員の事件」「日本人同性パートナーを有する外国人の在留資格」の4件が紹介されている。判決が出ている「府中青年の家事件」「S社性同一性障害者解雇事件」のみまとめる。

「府中青年の家事件」は1990年に府中青年の家という東京都の宿泊施設に「働くゲイとレズビアンの会(別名:アカー)」が宿泊した時に起きた。宿泊時、他団体から「ホモがいる」「オカマがいる」と言われた。その後、改めて宿泊利用を申し込んだ際には利用拒否されたという事件。結論は、東京地方裁判所・高等裁判所にてアカー側が勝訴し、利用拒否は違法であるとされた。東京高裁は、一般国民は同性愛や同性愛者に対して無関心で正確な知識が無くてもしょうがないけれど、行政が「無関心や知識がないということは公権力の行使する立場にある者は許されないことである」としている。

「S社性同一性障害者解雇事件」は平成14年(2002年)の性同一性障害特例法制定前に起きた事件。戸籍上の性別が男性、性自認は女性という方が女性の容姿で勤務することを希望したが、会社側がそれを禁止した。それに反して女性の姿で出社したところ、懲戒解雇された事件。判決は、懲戒解雇は懲戒権乱用で無効であるとした。会社側は他の従業員が嫌悪感や違和感を抱いて会社が混乱すると主張したのに対し、裁判所は性同一性障害に関する事情を認識し、理解を促すことで違和感や嫌悪感は緩和できるとした。更には、理解を促すことを会社は何もやっていないとしている。

大学での取り組み

津田塾大学、明治大学、国際基督教大学、国立大学の学長が各大学での取り組みや人権に対する考えを述べている。日本の大学の中でも、LGBTに対して先進的な取り組みをしている大学で、大学をはじめとした多くの教育機関にとって、上記の大学の取り組みや考えは参考になると考えます。ぜひ、本を読んでみてください。

まとめと感想

LGBTを取り巻く環境を、人権・法律という観点で世界と日本を比較し、それを本にしたことに大変意味があると感じます。世界各国と日本との違いが分かりやすく書かれています。深く理解したい人は是非、読んでください。LGBTの現状やSOGIの考え方がわかるだけではなく、視野が広まることと思います。