男性ホルモンと肝臓

コラム:LGBTQ基礎知識

理学療法士でトランスジェンダーのJUNです。

FTMがホルモン注射を始める時、お医者さんから「肝臓に負担がかかります。定期的に検査してください。」と注意される人は多いんじゃないでしょうか?

私は、ホルモン注射を始める時に言われ、定期的に血液検査で肝臓の数値をチェックしています。

ですが、どうして肝臓に負担がかかるのかわかりませんでした。

なので、今回は男性ホルモンと肝臓の関係について調べてみました。

  1. 男性ホルモンのはたらき
  2. 男性ホルモンが身体に吸収されるまで
  3. 自分に合ったホルモン注射をしよう

ホルモン注射を始めている人、始めようか迷っているけど体の中で何が起きているのか不安な人はぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。

1.男性ホルモンのはたらき

男性ホルモンは活動的になるホルモンです。元気ホルモンとも呼ばれていますが、いろいろなはたらきがあります。その中でも、ホルモン注射と関係が深い部分について書いていきます。

男性ホルモンは、アンドロゲンと呼ばれています。アンドロゲンの中に、精巣で作られるテストステロンが含まれています。この、テストステロンがエナルモンデポーなどの男性ホルモン注射の成分となっています。

アンドロゲンのはたらきは、男性に二次性徴の変化をもたらします。

ペニスが太く長くなる

声変りをする

髭が生え始める

体毛が全体的に増加する

攻撃的で活動的な態度をとる

異性に対して興味を持つようになる

肩幅増大、筋肉発育

ニキビの増加

ギャノング生理学 原書24版 489ページより一部抜粋

このような効果は、シス女性にもあることからFTMにも投与されるようになりました。

ただし、上記のような効果が起きると元には戻らないため、始めるのには大きな覚悟が必要です。

私は、生理が止まる、クリトリスの肥大化、声変り、髭が生える、体毛の増加、活動的になる、首が太くなる、筋肉が発達、ニキビが増加、性欲が増加といった効果がありました。これらの効果は、全てがいっぺんに始まるわけではなく、徐々に徐々に時間差で起きてきました。

一方で、始めてから2年くらいは更年期症状のような顔の火照りやイライラがありました。一時期は、当帰芍薬散などの更年期障害の漢方を飲んでいました。

2.男性ホルモンが身体に吸収されるまで

男性ホルモンが効果を表し始めるまでには、次の1~6の順で身体を巡ります。

男性ホルモンが体の中をめぐるまで
  1. 筋肉に男性ホルモンを注射
  2. 筋肉内の血管にホルモンが移動
  3. 血管内をホルモンが移動
  4. 肝臓へホルモンが運ばれる
  5. 肝臓内で男性ホルモンが分解|実際に使われるテストステロンになる
  6. テストステロンが全身に運ばれる。吸収しきれないテストステロンは体外へ

1.筋肉に男性ホルモンを注射

男性ホルモンは、筋肉注射で身体の中に入れられます。病院で打ってもらう場合は、お尻が多いのではないでしょうか?大殿筋という筋肉に注射することが多いと思います。

筋肉注射をする理由は、血管内に直接入れるには強い油性の薬剤だからです。

余談ですが、肩はあまり良くないと思います。肩は三角筋という筋肉になるのですが、神経が多く近いところを通っているので傷つけてしまうリスクがあります。

2.筋肉内の血管にホルモンが移動

筋肉内にある静脈にホルモン剤が移動します。

筋肉や血管の細胞を壊さないためにも、打ったところは揉まないほうが良いと言われています。

3.血管内をホルモンが移動/4.肝臓にホルモンが運ばれる

ホルモン剤は筋肉内の静脈から大きな静脈に移動し、肝臓に運ばれます。

5.肝臓内で男性ホルモンが分解|実際に使われるテストステロンになる

筋肉に注射されたホルモン剤は直ぐには身体の中で力を発揮できません。そのため、肝臓の中で使いやすいテストステロンに分解されます。

この時、肝臓には大きな負荷がかかります。

肝臓は、体内に入ってきたいろいろな物質を分解したり、使いやすい形に作りなおしたりする臓器です。お酒やお薬、筋トレした時に飲んでいる人も多いプロテインを分解するのも肝臓が活躍しています。

ですが、「沈黙の臓器」とも呼ばれており、異変が起きても症状として現われてくることはありません。そのため、定期的な検査が必要になってくるのです。

6.テストステロンが全身に運ばれる。吸収しきれないテストステロンは体外へ

肝臓で体が使いやすい形のテストステロンになったら、全身に運ばれます。全身に運ばれることで、声変りが起きたり生理が止まったりします。

しかし、肝臓で分解できる量やスピードには制限があるため、沢山の量を頻繁に打っても効果がすぐに出るというわけではありません。肝臓で分解しきれないホルモンはそのままおしっことして体外に出されます。

そのため、自分にあったホルモン注射の量と頻度を見つけてください。

3.自分に合ったホルモン注射をしよう

ホルモン注射の量や頻度は人によって異なると思います。

体格、SRSの有無、生活状況が人それぞれ違うので、違って当たり前です。

参考までに私の場合のホルモン注射の状況をのせておきます。私は身長151㎝で小柄でSRSをしていません。

ホルモン注射を始めた最初の半年ほどはエナルモンデポー125mgを2週間に1回打っていました。その後、生理がとまり、ある程度男性ホルモンが体になじんできたと感じ始めてから3週間に1回に変更しています。

最後に、ホルモン注射は自分の生活をよりよくするためのツールでしかありません。ホルモン注射によって生活が良くなる人もいれば、逆に悩みが増える人もいます。

ホルモン注射をするかしないか、今はまだ決断しないでおくのか、ということも含めて、ご自身の生活スタイルに合わせて考えてみてください。

2020.2.16   JUN