「女たちの21世紀」98号発売記念イベント 「フェミニズムとトランス排除」参加報告

2019年7月15日、海の日に「女たちの21世紀」98号発売記念イベント〈フェミニズムとトランス排除〉に参加してきた。

「女たちの21世紀」を発行し今回のイベントを企画したのはアジア女性資料センターである。アジア女性資料センターとは、パンフレットによると「暴力のない公正で持続可能な社会に向けて、女性たちのエンパワーメントのために、国境を越えて行動するフェミニスト団体」である。

今回のイベントは、「女たちの21世紀」98号発売記念イベント〈フェミニズムとトランス排除〉と題し、昨年から増加してきているTwitter上でのフェミニズムによるトランス女性の排除に関する問題に対してディスカッションをしていくものである。

座長である団体理事の元山氏の姿勢がとても丁寧でディスカッションは、丁寧に誠実に進んでいるのがとても印象的だった。一つ一つの問題を深堀しながら問題を共有していて、終始、お互いを尊重しながら本質を話し合っていた。その議論を目の前で見ることが出来たのはとても貴重な時間と経験だった。

主な議論を簡単に記録した。私のメモに基づく記録であるため、各登壇者の述べている意図とは少し異なってしまうかもしれないが、現在トランスジェンダーが置かれている問題について考える時に避けては通れない重要な議論であると感じる。

登壇者略歴

登壇者は畑野とまと氏、堀あきこ氏、三橋順子氏と豪華なメンバーだ。左から座長の元山氏、 畑野とまと氏、堀あきこ氏、三橋順子氏 。(写真)

ここで、登壇者の略歴を軽く紹介する。

畑野とまと氏:ライターでトランスウーマンのトランスジェンダー活動家。トランスジェンダーの権利が守られるように1996年より尽力されている。トランスカフェを開催している。

堀あきこ氏:大学非常勤講師でフェミニスト。「トランス女性に対する差別と排除とに反対するフェミニストおよびジェンダー/セクシュアリティ研究者の声明」の呼びかけ人の1人でもある。

三橋順子氏:性社会文化史研究者で明治大学文学部非常勤講師。トランスウーマン当事者。著書に「」がある。多数の論文誌や雑誌などに論文掲載や寄稿、講演するなど、トランスジェンダーに関する歴史学者の第一人者。

前提条件:トランス排除とフェミニズム

2018年には、Twitter上でのフェミニズムによる主にトランス女性の排除が問題になった。トランスジェンダー差別は根強くある。お茶の水女子大でのトランス女性の受け入れ拒否から受け入れ可能になるまで、多くの議論がなされた。

特に、トランス女性の女性トイレを使用することに対して拒否が強くあった。トランス女性が女性トイレを使用することでシス女性(性別違和を持たない生物学的女性)が襲われるのではないか、といった根深い感覚に基づいた差別が行われている。

2018年以降、アメリカをはじめとした世界各国でトランスジェンダー排除の動きが高まっている。その動きに対してどう対応していくのか、問題点をディスカッションしていく。

問題提起①:Twitterでのフェミニズムによるトランス排除の問題点

トランス排除の言説が昨年はTwitter上で盛り上がり始めた。これまでに何度もそういった話は出ている。これまでのTwitter上での動きなどで何が問題だと思っているか?

畑野とまと氏:日本では、トランスジェンダーが身近にいると思っている人が少ない。トランス嫌悪でよく聞かれるのが、「誰がトランスジェンダーかわからないのが一番怖い」という言葉だ。

海外と日本のトランス排除の大きな違いは、海外は実名で発言してる人が多いのに対し、日本では匿名で発言していることである。そこに、日本で生活する上での恐さがある。

堀あきこ氏:お茶の水女子大学の議論が出た時に論点は出尽くしたと思っている。 トランス排除では特にトランス女性が女性トイレを使用することに対して拒否的で差別されることが多い。

拒否の理由は主に2つあり、①トランス女性のことを男性だと見る見方、②トランス女性を犯罪予備軍だとみる見方である。この排除論では、女性トイレを使用するトランス女性が女性に対してレイプなどの犯罪行為をするという前提に立っていて、とても差別的である。

“パス”している人やSRSをしている人なら女性トイレを使っても良いという意見も多く、差別的である。また、「トランスジェンダーとはだれなのか?」という議論が多く散見される。

三橋順子氏:ご経験からのお話でとても貴重。トランスジェンダーを認めないという人は必ず5~10%いる。しかし、自分に害が無ければどうでも良い、という人が90%程度。昨今の特徴として、トランス排除の人が匿名性の高いTwitterというツールを持ってしまったことが問題。三橋氏個人としては、「排除できるもんならやってみろ」というスタンスの持ち主だが、Twitterが若年層にとって大きなウェイトを占めているという前提に立ってみると、トランス排除によって若年者の自殺が増えることを危惧している。

問題提起②:フェミニズムはセックスワークに対して差別的である。このフェミニズムのもとでセックスワークに対する差別はどこにあるか?

畑野氏:日本では、そもそも性に対して公に語られることがない。真面目に性について語る場面がないため、性に関するいろいろなことがタブー視されている。

そのため、性別に関して多くの人が“わけのわからないトランスジェンダー”が入ってきたと嫌悪の対象になることが多い。

また、アメリカ19世紀の女装禁止法をみてわかるように、“女装が気持ち悪い対象”となっているところから端を発するように、存在自体がわいせつであると捉えられている。この捉え方は、明治維新後に入ってきた考え方である。

堀氏:トランスジェンダーはジェンダーの話なのに、sexの話に変わり差別へと繋がっている。トランスジェンダーは性自認、性役割の話である。

しかし、差別的発言をする人は、トランスジェンダーが全員セックスワーカーかのように話をしていて、差別をしている。とても問題である。

三橋氏:Twitterでトランス排除をしているフェミニズムの人達は、人権思想を学ぶよりも先にフェミニズムを学んでいる人が多い印象を受ける。

そのため、その多くはトランスジェンダーの自己決定権を尊重しない人が多い。例えばトランス女性に対して女性トイレを使いたいなら手術(性別適合手術)をするべきだと考えている。

これは、トランス女性の「自分で手術をするかどうか決める権利」を否定していることになる。 今後の問題点としては、今までの潜在的にいるトランス排除者とフェミニズムのトランス排除者が繋がることが恐いし危険である。

問題提起③:現在、女性の権利やLGBTの権利が認められつつあり、ブームである時にフェミニズムによるトランス排除が起きていることに対してどう思うか?どう考えるか?

畑野氏:そもそも、日本ではフェミニズムが盛り上がっていないと感じる。アフターピルなどの問題に対して女性があまり参加してきていない現状を考えるとフェミニズム以前に、女性を取り巻く様々な問題を、女性自身が問題をどうにかしようという動きが出てきていないように感じる。みんなで我慢するのではなく、問題を打破していかなくては次のステップに行くことが出来ない。

堀氏:日本で女性が女性に関する様々な問題に声を上げづらかったり運動に参加し辛いのは、セカンドレイプの問題があるから。

何か言うと女は叩かれ、未だに死ねと言われる現状がある。そういった世間の反応が、女性を女性自身の問題から遠ざけ、運動に入っていけない原因の1つである。とはいえ、若い女の子がフェミニズムを取り上げ盛り上がりを見せている。

では、LGBTブームとは何なのだろうか?考えられるのは、自分に関係のないところで起きている話だと思っていたからブームとして運動の波に乗っていたのだと思う。

しかし、女性にとって駅のトイレは実際に恐く、そこでの話を突きつけられた時に初めて自分事として捉え、恐くなったのではないか。

三橋氏:少し違った切り口で話をしてみる。例え話をすると、人権というのは無限に広がっていくものであるが、パイのように考えている人がいる。パイだと限りがあるため、フェミニズムの部分のパイが取られてしまうと考えている人がいる。そのため、トランスジェンダーへはパイを分配できないと考えている人がいる。

現状としては、人権の捉え方を世界でパイを大きくしていこうという動きになっている。

ディスカッションを聞いて

トランスジェンダーやフェミニズム運動の最前線で活躍されている方々のディスカッションはとても貴重であると感じました。

トランスジェンダーに対して行われている差別の現状や原因について、しっかりと経験を基にした当事者研究から学術レベルで話を進めていき、少しずつ課題解決に向けて自分にできることをやっていこうと思います。

このブログもそのための1つの活動です。 参加したイベントを簡単にダイジェストに伝えることで、トランスジェンダーを取り巻く現状をより多くの人に知ってもらいたいと思っています。